国際結婚について
- Q私の交際している男性(外国籍)は、ビザの期限が切れてしまい現在オーバーステイの状態です。この場合でも結婚することはできるのでしょうか。また、私と結婚することによって男性はビザを取得することができますか。
- A
1.婚姻の可否
婚姻が有効に成立するか否かは、婚姻の実質的成立要件を具備しているか否かによって判断されます。そして、我が国の法律上、婚姻の実質的成立要件には、在留資格に関する点は何ら規定されていません。そういったことから、オーバーステイの状態の方でも、日本で婚姻することは可能です。
日本人とオーバーステイの外国人の方が結婚するためには、婚姻届に必要事項を記載し、外国人の方の婚姻要件具備証明書を添付して市区町村長に提出する必要があります。
2.在留資格の取得
オーバーステイの外国人が日本人との間で法的に有効な婚姻が成立した場合、当該外国人は、在留特別許可によって「日本人の配偶者等」の在留資格を得られる可能性があります。在留特別許可が付与されるか否かの判断基準は、法律上は定めがありませんが、出入国在留管理庁から一定の指針(ガイドライン)が公表されていますので、参考にする必要があります。
- Q私も交際している男性も共に外国籍(A国)です。私たちのように外国籍同士でも日本で婚姻届を提出して婚姻することはできますか。
- A
日本の法律上、婚姻の方式に関する準拠法は、①各当事者の本国法又は②婚姻挙行地の法律によるとされています。そのため、あなたの場合には、夫婦の共通本国法であるA国の法律によることもできますし、婚姻挙行地である日本の法律によることもできるということになります。つまり、日本の市区町村に婚姻届を提出することによって婚姻を成立させることができます。
なお、上記の通り各当事者の本国法によることもできますので、例えばA国で宗教婚が認められているのであれば、そのような方式による婚姻も日本法上有効な婚姻となります。
- Q私は、現在日本に在住しており、同じく日本在住の外国籍の男性と交際しています。結婚にあたっては、どのような手続きが必要ですか。
- A
日本で婚姻する場合には、相手方が外国籍の場合であっても、方式は日本法による必要があります。日本の方式による婚姻手続きとは、婚姻届の提出を意味しています。つまり、日本人同士の結婚と同様に日本の市区町村に婚姻届を提出することによって婚姻が成立することとなります。
市区町村長は、実質的要件の欠缺がないことを認めたのちでなければ、婚姻届を受理することはできません。しかし、市区町村長が世界各国の法律を精査し、実質的要件の欠缺があるか否かを逐一検討することは困難です。そこで、戸籍実務上は、各国から発行される婚姻成立の要件を具備していることを証明する書面(婚姻要件具備証明書)を添付することが必要とされています。
- Q私は、日本の大学に留学生として在留している18歳の中国人です。現在20歳の日本人男性と交際しており、その男性とは、来年結婚することを約束しました。私は、問題なく日本で結婚することができるのでしょうか。
- A
中国の法律(婚姻法)では、男性は満22歳、女性は満20歳が婚姻可能な年齢とされています。そうすると、あなたは現在18歳ですから、日本人男性と結婚することはできないようにも思えます。しかし、中国の民法によると、中華人民共和国公民と外国人との婚姻には婚姻締結地の法律を適用するとされています。また、中国の渉外民事関係法律適用法によると、婚姻の実質的成立要件は当事者の共通常居所地法によるとされています。
あなたは、日本に居住している留学生ということですので、あなたと日本人男性の共通常居所地法は日本法であると考えられます。したがって、日本法律に従い、現在満18歳であり日本の婚姻適齢にあるあなたは、日本人男性と婚姻することが可能であると考えられます。
- Q私はフィリピン国籍の女性です。日本で日本人男性と結婚しましたが、2年前に日本で裁判離婚をしました。この度、日本人男性と再婚を考えているのですが、婚姻要件具備証明書(独身証明書)を取得することができません。私は再婚することはできるのでしょうか。
- A
婚姻要件具備証明書(独身証明書)を取得することができない場合でも、婚姻要件具備証明書を提出できないことと、本国法の定める婚姻要件を満たしている旨を記載した「申述書」を提出することによって再婚が認められ可能性があります。この申述書は、単に本国法上婚姻にあたってのすべての要件を満たしている旨を抽象的に記載するだけでなく、個別の要件を満たしていることを具体的に記載することが必要であると考えられています。
なお、このような届出については、婚姻届けを受理してよいかどうか市区町村長限りで判断することは困難です。そこで、管轄の法務局に受理伺いがなされるのが一般的です。この場合は、受理までに相当の期間を要することがあります。
- Q私は日本人女性です。外国人の男性と結婚した場合、私の苗字(氏)はどうなりますか。また、私の国籍に変更はありますか。
- A
1.苗字(氏)について
日本では未だ夫婦別姓が認められていません(2025年9月時点)。そのため、日本人同士が婚姻した場合、夫婦の一方は他方と同じ氏に変更する必要があります。これに対して、外国人と婚姻した場合には、当然に氏が変更されるわけではありません。婚姻成立後6か月以内であれば、「外国人配偶者の氏への氏変更届」を提出することによって、外国籍配偶者と同じ氏に変更することができるとされています。
国によっては、婚姻によって夫婦双方の氏を結合した氏を称することがあります。例えば、佐藤さんと鈴木さんが結婚した場合、佐藤鈴木という氏を名乗るイメージです。日本ではこのような複合氏は認められていません。そこで、どうしても複合氏を名乗りたい場合には、家庭裁判所の許可を得て、氏を複合氏に変更する必要があります。
2.国籍について
日本の国籍法上は、婚姻による国籍の得喪について何ら規定していません。そのため、婚姻によって日本人が日本の国籍を失うことはありません。他方で、海外の国の中には、当該国の男性と婚姻した女性に自動的に国籍を付与する定めをしている場合があります。例えば、イランの法律では、イラン人男性と外国籍の女性が婚姻した場合、外国籍の女性に自動的にイランの国籍を付与する定めをしています。日本の国籍法上は、自己の意思により外国の国籍を取得した場合には、日本の国籍を喪失する旨の定めがありますが、婚姻による国籍の取得は自己の意思による取得とは認められないため(法律によって自動的に付与されるものであるため)、日本の国籍を喪失することはないとされています。