ocean law office

MENU

返還請求の流れ

はじめに

子どもが国外に連れ去られた場合、時間との戦いです。ハーグ条約に基づく返還請求は、原則として1年以内に行う必要があります。
本ページでは、条約締約国から日本に連れ去られ、あるいは留置されている子の返還請求について、実際の手続きの流れをステップごとに解説し、どう動けばよいかを具体的にご案内します。

STEP1専門家への相談・状況の整理

まずは国際家事事件に精通した弁護士へ相談し、以下の点を整理します:
  • 子どもの常居所地(通常の生活拠点)はどこか
  • 子どもの連れ去り・留置はいつ発生したか
  • 連れ去り・留置が「不法」といえるか
  • 連れ去られた親(相談者)の親権・監護権の有無
  • 連れ相手方の居場所と連絡の可否

この段階で、ハーグ条約に基づく返還請求ができるのかを慎重に判断します。

STEP2申立書類の準備と提出

返還請求の申立ては、日本の家庭裁判所(子の所在地に応じて東京家庭裁判所または大阪家庭裁判所)を通じて行います。

必要書類の例:
  • 子の返還申立書
  • 申立人、相手方及びお子様それぞれの身分事項(国籍、本籍、生年月日、身分関係等)を証する公的書面 (戸籍謄本(全部事項証明書)、婚姻証明書、出生証明書など)
  • 親権者であることを証明する書類(常居所地国の裁判所においてされた親権・監護権についての決定、子の監護に関する当事者間の合意書、申立人の陳述書等)連れ去りの経緯を示す事情説明書
  • パスポートや入出国記録などの証拠資料

また、子の返還決定手続の間に相手方が子どもを日本国外に連れ出すことを避けるため,手続と併せて,相手方が子どもを日本国外に連れ出すことを禁止する出国禁止命令や,子ども名義の旅券(パスポート)を外務大臣に提出するよう命ずる旅券提出命令の申立てを行うこともできます。

なお、裁判所への申立ての前に、外務省(外務大臣)に対する外国返還援助申請を行い,外務省(外務大臣)において外国返還援助を行うことが決定された場合には,申請者と子を監護している方との間で,子の返還や面会交流のための協議のあっせん等が行われ,裁判所の手続によらずして当事者間での任意の解決が期待できることがあります。

 また,仮に,子の住所や子と同居されている方の氏名・住所が判明しない場合には,裁判所としてはそのまま手続を進めることができませんが,外務省(外務大臣)が外国返還援助決定を行った場合,外務省(外務大臣)が関係機関から情報を収集して,子の住所や子と同居している方の氏名や住所の特定を行います。したがって,手続を迅速に遂行するためにも,できるだけ早い段階で外国返還援助申請が行われていることが望ましいといえます。

STEP3申立書受理から第1回期日

申立てを受理した家庭裁判所は、以下のような手続を行います:
  • 相手方へ申立書送付、反論(答弁書)及び証拠提出を促す
  • 期日の指定
  • 第1回期日において双方の主張意見の確認
  • 調停に付してよいかどうかの確認
  • 家庭裁判所の調査官調査実施の要否の確認

調停に付すことが決定した場合は、第1回期日と第2回期日の間に、複数回の調停が実施されます。さらに、第2回期日の後、正式な決定が出されるまでに、数回の調停が行われます。

STEP4調停

調停では、2名の調停委員を通じて、双方が話し合いで解決を図ります。当事者はお互い対面せず、それぞれ調停委員とだけ話をします(代理人弁護士は同席します)。

調停手続きでは、以下の話し合いをすることも可能です:
  • 子が常居所地国に帰国するか日本に居住し続けるかどうか
  • 常居所地国へ帰国する場合の帰国費用について
  • 当面の間の子の居住環境について
  • 婚姻費用や養育費の負担の在り方
  • 面会交流について
  • 子の監護権・親権に関する取決めなど

返還について当事者間で合意に達すれば、調停成立となり、調停調書が作成されます。

調停成立となった場合は、調停は終了し,子の返還決定手続は,申立ての取下げがあったものとみなされて終了します。
調停委員会が,当事者間に合意が成立する見込みがないと認める場合には,裁判所が,調停に代わる審判をする場合を除き,調停不成立により調停が終了します。調停不成立により調停が終了した場合には,子の返還決定手続は続行します。

裁判所は,調停手続中に提出された書類を子の返還決定手続の審理において用いることがあります。なお,当事者が,調停手続における話合いの内容を子の返還決定手続において主張することは特段制限されません。

STEP5第2回期日以降

第2回期日までに調停が成立していない場合には、第2回期日において、当事者双方の本人尋問が行われます。また、第2回期日までの間に、裁判所の調査官による当事者ら(申立人・相手方・子ども)の面談調査が行われることがあります。

STEP6返還命令

その後、裁判所はこれまでの審理・調査に基づき、子どもの返還を認めるかどうかの決定を出します。「返還命令」が出された場合は、相手方は一定の期限内に子どもを元の国へ戻す義務を負います。

STEP7返還の履行・強制執行

相手方が任意に返還に応じない場合は、間接強制や強制執行の手続きを申し立てることが可能です。

  1. 間接強制:
    一定期間内に子の返還に応じない場合、1日いくらという一定金額の支払を命じる決定手続き
  2. 強制執行:
    裁判所の返還命令や調停調書、和解調書に基づき、裁判所の執行官が、どもを保護し、常居所地への返還を実施する。必要に応じて、警察や関係機関の協力も仰ぐ。

強制執行は最終手段であり、実施にあたっては、子どもの心理的ケアについて十分検討し、子どもの安全と心の安定に最大限配慮することが求められます。

STEP8返還後の支援

子どもが元の国に戻った後も、以下のようなサポートが必要です:
  • 面会交流の調整(相手親との連絡支援)
  • 親権・監護権の見直し
  • 子どもの心理的ケア
  • 再連れ去り防止策の検討

当事務所では、返還後も継続的な支援体制を整えています。

よくあるご質問(抜粋)

Q.手続きにはどのくらいの期間がかかりますか?

A.

通常の裁判や調停と比べ、非常にスピーディに進行します。原則として、裁判所は申立から6週間以内に決定を出すことを求められており、法律上も、申立てがされてから6週間が経過したときは、申立人又は外務大臣は事件が係属している裁判所に対して,審理の進捗状況について説明を求めることができることとされています(ハーグ条約実施法151条)。

Q.海外在住でも申立てできますか?

A.

はい。日本の家庭裁判所に申立て可能です。その場合には、代理人が必要となります。当事務所では、海外在住の方からのご依頼を受け事件を解決に導いた経験も多数ございますので、まずはご相談ください。

ご相談はお早めに

返還請求は早ければ早いほど有利です。迷っている時間が長くなるほど、子どもの順応が進み、返還が難しくなる場合もあります。
当事務所では、初回相談から書類作成、申立て、審理、返還後支援までワンストップで対応いたします。

どうぞ安心してご相談ください。

ご相談はこちら

フローチャート

フローチャート
MENU