在留資格変更許可申請
ある在留資格で日本に滞在している場合に、その在留の目的が変更する場合等には、在留期間中に出入国在留管理局に対して在留資格変更許可申請を行う必要があります。
典型的な例としては、「日本人の配偶者等」で在留している外国人が、日本人と離婚した場合には、日本人の配偶者としての活動を行っていないことになるため、本邦に滞在を続けるためには、「定住者」等他の在留資格に変更する必要があります。
また、留学生が大学を卒業後に日本の会社に就職する場合には、「留学」の在留資格から「技術・人文知識・国際業務」の在留資格に変更する必要があります。
在留資格の変更が認められるためには、「変更を適当と認めるに足りる相当な理由」があることが必要になります(出入国管理及び難民認定法20条)。
そこで、在留資格変更許可申請をする際には、日本での活動内容に応じた資料を提出する必要があります。
「日本人の配偶者等」から「定住者」の在留資格へ変更する場合の判断基準
「日本人の配偶者等」の在留資格を持つ者が、日本人と離婚をして、「定住者」の在留資格へ変更申請をする場合に、以下のような項目が判断の際に考慮されていると考えられます。
- (ⅰ)下記(ⅱ)以外の場合
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- ①正常な婚姻関係・家庭生活を築いてきたこと
法的に婚姻が成立し、同居期間が3年程度以上あればいいと考えられます。
また、別居していても、夫婦としての相互扶助、交流して認められれば、これに該当する可能性があります。 - ②生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- ③日常生活に不自由しない程度の日本語能力を有しており、通常の社会生活を営むことが困難ではないこと
- ④公的義務を履行していること又は履行が見込まれること
- ①正常な婚姻関係・家庭生活を築いてきたこと
- (ⅱ)日本人の実子を監護・養育する場合
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- ①生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
- ②日本人との間に出生した子を監護・養育している者であり、次のいずれにも該当すること
- ア 日本人の実子の親権者であること、または
- イ 現に相当期間当該実子を監護・養育していること
解決事例
以下に当事務所が手掛けた在留資格変更許可申請の事例についてご紹介いたします。
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- Case 1(出国準備の「特定活動」の在留資格から「技能」への在留資格への変更が認められた事例)
- 事案
相談者は、A国籍の男性で、もともとインド料理のコックとして技能の在留資格で日本で生活をしていました。しかし、その後の在留資格更新申請が不許可となり、出国準備のための特定活動の在留資格となっていました。相談者としては、日本にもっと滞在することを希望していました。 - 解決方法
在留資格更新申請が不許可となった理由については、以前、勤務していたレストランがインド料理の専門店ではなかったことが理由であることが分かりました。そこで、別のインド料理を専門的に提供するレストランとの間で勤務条件等について調整し、弁護士の意見書を添えて、特定活動から技能への在留資格変更許可申請をしました。その結果、数か月後に無事、技能の在留資格への変更が認められ、日本に滞在を続けられることとなりました。
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- Case 2(出国準備の「特定活動」の在留資格から「日本人の配偶者等」への変更が認められた事例)
- 事案
相談者は、B国籍の男性です。日本人の女性と結婚して、日本人の配偶者等の在留資格で日本で生活をしていました。しかし、その後、同じ日本人女性と離婚と結婚を繰り返したことにより、日本人の女性と結婚している状態であったにもかかわらず、日本人の配偶者などの在留資格が認められず、出国準備のための特定活動の在留資格となっていました。相談者として、日本人の配偶者等の在留資格を取得することを希望していました。 - 解決方法
日本人の配偶者等の在留資格が付与されなかった理由については、日本人女性と結婚と離婚を繰り返していたことより婚姻の真実性に疑義があるとされたからであることが分かりました。そこで、夫婦が結婚や離婚を繰り返してきた理由や実体ある夫婦であることを基礎づける事情を説明する弁護士の意見書や資料を提出して、特定活動から日本人の配偶者等への在留資格変更許可申請をしました。その結果、無事、日本人の配偶者等の在留資格への変更が認められました。
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- Case 3(出国準備の「特定活動」の在留資格から「定住者」への変更が認められた事例)
- 事案
相談者は、A国籍の男性です。日本人女性と15年以上婚姻関係にありましたが、不仲となり、離婚しました。当時、相談者の在留資格は「日本人の配偶者等」でした。相談者は、在留資格をどうすればよいか行政書士の先生に相談したところ、「投資経営」(現在の「経営管理」)の在留資格に変更すればよいとのアドバイスを得たため、そのように変更許可申請を行いました。しかし、変更申請は不許可となり、出国準備のための「特定活動」の在留資格が付与されました。相談者は、何とかして日本に滞在したいと考え、当事務所に相談に来ました。 - 解決方法
相談者が長年日本で平穏な生活を送ってきたこと、日本で生活をしていくのに十分な資力があること、元妻との間に子がおり、その子と面会交流を継続する必要があることなどを記載した意見書に証拠を添えて、「定住者」への変更許可申請を行いました。結果が出るまで半年以上時間がかかりましたが、無事変更が許可され、「定住者」の在留資格を取得することができました。
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- Case 4(離婚後に「日本人の配偶者等」の在留資格から「定住者」への変更が認められた事例)
- 事案
相談者はB国籍の女性です。日本人男性と婚姻関係にあり、「日本人の配偶者等」の在留資格を有していますが、離婚しました。離婚後の在留資格がどうなるのか心配だということで、当事務所に相談に来ました。 - 解決方法
相談者には、元夫である日本人男性との間に子どもがあり、子どもは日本国籍であること、離婚後は相談者が日本で子どもを育てていくこと、これまで日本で安定した生活を送ってきたこと、今後も日本で生活を続けるのに十分な資力があることなどを証する資料をそろえ、弁護士が身元保証人となって、「定住者」への資格変更許可申請を行ったところ、無事に変更が認められました。
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- Case 5(日本人の配偶者と別居中(離婚前)に「日本人の配偶者等」の在留資格から「定住者」への変更が認められた事例)
- 事案
相談者はC国籍の女性です。日本人男性と結婚して子どもも生まれ、25年以上婚姻関係を続けてきましたが、不仲になりました。離婚調停の結果、当面離婚はしないが、別居を続けることになりました。離婚はしていないものの、婚姻関係が実質破綻しており、現在の「日本人の配偶者等」の在留資格の更新に夫の協力が得られないことから、他の在留資格への変更を希望していました。 - 解決方法
相談者は長年日本で平穏に生活し、子を育ててきており、生活の基盤が日本にあること、十分な日本語力があること、正社員として稼働しており、自身が生活するのに十分な資力があること、成人し社会人となった実子が身元保証人になること等を記載した意見書を添えて、「定住者」への資格変更許可申請を行ったところ、無事に許可されました。
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- Case 6(有罪判決後に「日本人の配偶者等」の在留資格への変更が認められた事例)
- 事案
相談者はE国籍の女性です。日本人男性Bと内縁関係にありましたが、諸般の事情により、その男性ではない別の男性Cと婚姻届を提出し、「日本人の配偶者等」の在留資格を取得しました。その後、女性は、Cとの結婚が偽装結婚であるとして、警察に逮捕されました。当事務所の弁護士が女性の弁護人となり、刑事事件の段階から関与することとなりました。 - 解決方法
刑事裁判手続中にCとの婚姻関係を解消するため、Cを相手方として婚姻無効確認の調停の申立てをし、婚姻無効の審判を取得しました。そして、刑事裁判で有罪判決が下された後、在留期間満了が近づいていたため、一旦、短期滞在の在留資格への変更許可申請を行いました。その後、Bとの婚姻手続を完了させ、日本人の配偶者等の在留資格への変更許可申請を行いました。Bとの真摯な婚姻関係が認められ、無事、在留資格の変更が許可されました。
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- Case 7(離婚後に「日本人の配偶者等」の在留資格から「経営・管理」への変更が認められた例)
- 事案
相談者はF国籍の男性です。日本人の女性と結婚して、「日本人の配偶者等」の在留資格で日本で生活をしていました。その後離婚したため、在留資格の変更が必要になりました。婚姻期間は1年未満でした。相談者としては、このまま日本での生活を希望していました。 - 解決方法
まず、「日本人の配偶者等」から「定住者」へ在留資格の変更を検討しました。しかし、日本人の配偶者等から定住者へ変更するために必要な婚姻期間を経過しておらず、定住者への変更ができないものと考えられました。
そこで、相談者が日本で会社を経営していたことから、「経営・管理」への変更許可申請を行いました。相談者からのヒアリングを行ったうえで、弁護士が事業計画書を作成し、資本金の原資や事業の概要についての説明書・資料を添えて申請した結果、無事「経営・管理」の在留資格への変更が認められました。
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- Case 8(難民申請中の「特定活動」の在留資格から「技術・人文知識・国際関係」への変更が認められた事例)
- 事案
相談者は、G国籍の男性です。来日後は、難民申請をしており、結果がでるまで、「特定活動」の在留資格が付与されて日本に滞在していました。相談者は、今後も日本に滞在を続けることを希望して、当事務所に相談に来られました。 - 解決方法
「特定活動」の在留資格で滞在している間に、相談者は町工場にて、アルバイトとして製品の製造業務に従事していました。海外からの受注が増えていく中、この町工場には、相談者以外、英語ができる人はいませんでした。そこで、通訳・翻訳、外国人との交渉ができる人員を正式に雇用したいというニーズもあって、相談者を正社員として雇用する事が決まりました。この業務が「技術・人文知識・国際業務」の業務に該当することを意見書で説明し、同資格の在留資格変更許可申請を行いました。その結果、無事、同資格を取得することができました。