外国人労務管理
1.海外在住の外国人を雇い入れる場合の手続の流れ
海外在住の外国人を雇い入れるためには、まず出入国在留管理局に対して、在留資格認定証明書の交付申請を行い、在留資格認定証明書を取得するのが一般的です。在留資格認定証明書が交付されるまでの期間は、ケースバイケースですが、数か月かかることもまれではありません。
在留資格認定証明書が交付されたら、それを外国にいる当該外国人に送付します。在留資格認定証明書を受領した外国人は、それを持って現地の日本大使館、総領事館に行き、ビザ(査証)の申請を行います。査証(ビザ)が発給されたら、日本に入国することができます。
- 日本入国までの流れ
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- ステップ1
日本で在留資格認定証明書交付申請の手続を行う申請者を決定します。
(日本にいる外国人本人、あるいはその受入機関である会社が行います。) - ステップ2
出入国在留管理局に対して在留資格認定証明書の交付申請を行います。
(申請は、申請者の居住予定地、受入会社等の所在地を管轄する地方出入国在留管理局で行います。) - ステップ3
出入国在留管理局より在留資格認定証明書が交付され、日本にいる申請者に送付されます。
※交付までに数か月かかります。
なお外国人本人が日本国内にいる場合には、いったん出国することなく、現在の在留資格(短期滞在)から新たな在留資格に変更することができます。 - ステップ4
在留資格認定証明書を海外にいる外国人へEMSなどの国際郵便で郵送します。
- ステップ5
外国人本人が現地の日本大使館または領事館で査証の発給申請を行います。
- ステップ6
査証を所持して来日します。
※なお、原則として在留資格認定証明書の交付日から3か月以内に入国する必要があります。 - ステップ7
日本への上陸時に在留資格及び在留期間が決定されます。
- ステップ1
- 在留資格認定証明書申請時に必要となる書類
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在留資格認定証明書申請にあたっては、以下の書類を揃えて出入国在留管理局に提出する必要があります。
なお、ケースによっては、出入国在留管理局から、追加での資料の提出を求められる場合もあります。- (1) 在留資格認定証明書交付申請書
- (2) 顔写真 1枚(縦4センチ、横3センチ)
- (3) 返信用封筒(切手貼付、後日この封筒で許可不許可の通知がとどきます。)
- (4) 所属機関との間の雇用契約書・労働条件通知書
- (5) 学歴証明書(卒業証明書、在留資格によっては不要の場合もあります。)
- (6) 履歴書
- (7) 日本の所属機関の全部事項証明書
- (8) 日本の所属機関の会社案内書(なければ、ホームページをプリントアウトしたものでも代替可能です。)
- (9) 日本の所属機関の直近1年の決算書類の写し
- (10)
- ①日本の所属機関が上場企業である場合、四季報(写し)等
- ②日本の所属機関が非上場企業の場合、前年分給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表の写し
- ③日本の所属機関が新設法人であるなどの理由により、上記のいずれも提出することができない場合、下記の書類
- 源泉徴収の免除を受ける機関の場合、外国法人の源泉徴収に対する免除証明書その他の源泉徴収を要しないことを明らかにする資料
- 源泉徴収の免除を受けない機関の場合、給与支払事務所等の開設届出書の写し、及び
a)直近3か月分の給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書(領収日付印のあるものの写し) 又は b)納期の特例を受けている場合は、その承認を受けていることを明らかにする資料
2.海外国人を採用する場合の注意点
外国人を採用する場合には、当該外国人が、会社が従事させようとする業務につくことができる在留資格を有しているのか否かを十分に確認する必要があります。
経営・管理 | 日本において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動 |
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技術・人文知識・国際業務 | 日本の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学、その他の自然科学の分野もしくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術もしくは知識を要する業務または外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務に従事する活動
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企業内転勤 | 日本に本店、支店、その他の事業所のある公私の機関の外国にある事業所の職員が日本にある事業所に期間を定めて転勤して当該事業所において行う技術・人文知識・国際業務の活動 |
法律・会計業務 | 外国法事務弁護士、外国公認会計士、その他法律上資格を有する者が行うこととされている法律または会計に係る業務に従事する活動 |
技能 | 日本の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動
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- 確認の方法
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外国人を採用する場合には、必ず在留カードを提示させて、有している在留資格、在留期間を確認する必要があります。
在留カードの表面に「就労制限の有無」という記載があります。ここで「就労不可」という記載がある場合には、原則として当該外交人を雇用して就労さることはできません。例外として、就労不可の在留資格であっても、就労をする資格外活動許可を受けた場合には、週28時間以内の就労が認められます。
3.不法就労になるパターン
不法就労になるパターンとしては以下の3つが考えられます。違反した場合には、雇用主も罰せられることがありますので、外国人を不法就労をさせることがないように十分注意する必要があります。
- ①不法入国者(密入国)や超過滞在者(オーバーステイ)が働く場合
これらの者は、そもそも日本に適法に在留する資格を有していないので、当然に雇用して、就労させることができません。 - ②在留資格自体は有しているものの、日本で働くことが許可されていない場合
例えば、短期の観光目的で来日した外国人については、「短期滞在」という在留資格自体は有していますが、日本で就労することは認められておりません。このような外国人を就労させることはできません。 - ③許可された範囲・時間を超えて業務を行わせる場合
在留資格を有している場合であっても、付与された在留資格で行うことを許可された業務の内容を超えた業務を行うことは許されません。たとえば、「技能」の在留資格を有しているインド料理のコックをラーメン店の皿洗いを行わせるために雇用することはできません。必ず、付与された在留資格の範囲内の業務を行わせる必要があります。
また、資格外活動許可を受けた留学生については、就労することができるのは週に28時間という時間的な制約があります。制約時間を超えて業務を行わせることはできません。
- 違反した場合の罰則
- 不法就労をさせたり、そのあっせんをした者については、「不法就労助長罪」という刑罰が科される場合があります。また、不法就労をさせたり、そのあっせんをした者が外国人である場合には、退去強制の対象となります。
4.留学、家族滞在の在留資格を有する外国人の就労時間
留学、家族滞在の在留資格を有する外国人は、資格外活動の許可を受けた場合には1週間に28時間以内の就労が認められます。なお、留学の在留資格を有する外国人は、在籍する学校の長期休業期間中には、1日8時間まで就労することが認められます。(家族滞在の方については、このような例外はありません。)
就労時間の制限を大きく逸脱したような場合には、在留期間の更新が認められなかったり、最悪の場合には不法就労として摘発される可能性もあるので注意する必要があります(この場合に雇用主にも刑罰が科される恐れがあることは先述の通りです)。
5.外国人雇用状況の届出義務
外国人労働者を雇用している事業主は、外国人を採用する際、及び、外国人が離職する際に、その氏名、在留資格などを確認し、ハローワークへ届け出ることが法令上義務づけられています。届出を怠ると30万円以下の罰金が科せられることがあります。
なお、届出の対象となるのは、「外交」「公用」以外の在留資格の外国人です。