改正の背景
問題の背景
近年、日本への移住を目的として「経営・管理」の在留資格を悪用する外国人が増加。 経営の意思も能力もないにもかかわらず、それを装って在留資格を取得するケースが指摘されています。
国際比較
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- 韓国:
- 3億ウォン(約3,200万円)
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- 米国:
- 10万~20万米ドル(約1,500万~3,000万円)
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- 日本(改正前):
- 500万円
緩すぎる基準
改正の目的
- ペーパーカンパニーの排除
- 実態のある事業経営の促進
- より厳格な審査基準の導入
改正の内容(5つのポイント)
1常勤職員の雇用が必須に
新要件
1人以上の常勤職員を雇用することが必須
- 対象者:
- 日本人、特別永住者、法別表第二の在留資格者
(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)
対象外
法別表第一の在留資格者は対象外
- 技能ビザ保持者
- 技術・人文知識・国際業務ビザ保持者
2資本金・出資総額の大幅な引上げ
法人の場合
株式会社の払込済資本の額、または合同会社の出資総額
個人事業主の場合
事業所確保、人件費(1年分)、
設備投資など事業遂行に必要な資金総額
3日本語能力要件の追加
申請者または常勤職員のいずれかが相当程度の日本語能力を有することが必須
「相当程度の日本語能力」の基準
- JLPT N2以上
- BJTビジネス日本語テスト400点以上
- 日本で20年以上の在留経験
- 日本の大学・大学院の卒業者
- 日本の義務教育修了+高校卒業
対象者
日本人、特別永住者及び法別表第二の在留資格者に加え、別表一の在留資格者も含む
※外国人経営者本人が日本語を理解していない場合は、日本語能力のあるスタッフの雇用が必須
4経歴・学歴に関する条件の追加
申請者本人には、以下のいずれかの条件が必須となります:
学歴要件
経営や関連分野での博士・修士・専門職学位を有すること
※外国の大学・大学院での学位も含む
職歴要件
経営または管理に関する3年以上の職歴を有すること
※特定活動(51号・未来創造人材)での起業準備期間もカウント
5在留資格決定時における専門家の確認
事業計画書について、専門家による確認が義務化
- 中小企業診断士
- 公認会計士
- 税理士
※上場企業等の場合は除外されます
申請に関する取扱いの変更点
事業内容について
業務委託を行うなどして経営者としての活動実態が十分に認められない場合は、在留資格「経営・管理」に該当しないものとして取り扱い
在留中の出国について
在留期間中、正当な理由なく長期間の出国を行っていた場合は、本邦における活動実態がないものとして在留期間更新許可は認められません
事業所について
改正後の規模等に応じた経営活動を行うための事業所を確保する必要があり、自宅兼事務所は原則として認められません
公租公課の履行について
在留期間更新時に以下の支払義務の履行状況を確認:
- 労働保険(雇用保険・労災保険)
- 社会保険(健康保険・厚生年金保険)
- 国税・地方税の納付状況
永住許可申請等について
施行日後、改正後の許可基準に適合していない場合は、永住許可及び高度専門職への変更許可は認められません
許認可の取得について
申請者が営む事業に係る必要な許認可の取得状況等を証する資料の提出を求めます
施行日前の申請の取扱い
経過措置
本改正省令の施行日の前日(2025年10月15日)までに受付し、審査を継続している申請については、改正前の許可基準を適用します。
- 対象となる申請
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- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留期間更新許可申請
- その他関連する申請
既存資格者の更新について
施行日から3年間の猶予期間(2025年10月16日〜2028年10月16日)
猶予期間中の取扱い
改正後の許可基準に適合しない場合でも、以下を踏まえて許否判断:
- 経営状況
- 改正後の許可基準に適合する見込み
- 経営に関する専門家の評価
必要書類
審査にあたっては、経営に関する専門家の評価を受けた文書の提出を求められる場合があります
3年経過後(2028年10月16日以降)
改正後の許可基準に適合する必要があります
例外:
- 改正後の許可基準に適合しない場合でも、経営状況が良好で法人税等の納付義務を適切に履行しており、 次回更新申請時までに改正後の許可基準を満たす見込みがあるときは、その他の在留状況を総合的に考慮し許否判断
まとめ
改正の影響
経営・管理の在留資格を取得するハードルは極めて高くなりました。 これまで可能だった小規模の飲食店経営では、今後の取得は極めて困難になります。
淘汰される事業
- 実体のない会社(ペーパーカンパニー)
- 小規模事業(資本金不足)
- 見せ金による設立
残る事業
- 強固な経営基盤を有する会社
- 実態のある事業経営
- 十分な資本と人材を確保した企業
今後の課題
この改正は、日本で会社を経営しようという意欲のある者の「経営・管理」在留資格取得を大きく制限するものです。 一方で、政府は特定技能の導入等により実質的にはブルーワーカーの入国を大幅に拡大しています。
※入管政策の大局が間違っていないか、政策がちぐはぐになっていないか、今後の検証が待たれるところです。
重要な注意事項
入管を欺くような手段により在留資格を得ることは絶対に許されません。
適切な手続きと正確な情報提供を心がけてください。