
海外在住の日本人が日本の家庭裁判所で離婚を進めた実例とその流れ
1.海外在住でも日本の家庭裁判所で離婚できるのか?
1-1.国際離婚における「管轄権」の考え方
日本の裁判所が海外在住者の離婚を扱うには「国際裁判管轄」が必要です。判断には、当事者の国籍・住所、相手方や子どもの居住地が重視されます。日本国籍または日本に住所があると管轄が認められやすく、相手が国外在住でも「被告」の居住が明確なら、離婚の申立てが可能です。
1-2.日本の家庭裁判所での離婚が可能な典型パターン
海外在住でも、①当事者の一方が日本国籍であること、②戸籍が日本にあること、③離婚手続きを日本で代理できる弁護士がいること、この3条件を満たせば、本人が出席できなくても家庭裁判所に調停を申し立て可能です。近年のオンライン対応も後押しとなっています。
2.実例:アメリカ在住の日本人女性が日本の家庭裁判所に調停を申し立てたケース
2-1.ケースの背景
アメリカ在住の日本人女性が、アメリカ人との国際結婚後に離婚調停を日本で行った例です。妻と子(アメリカ国籍)がアメリカ在住のまま、夫は日本一時帰国中。妻は直接出席できないものの、家庭裁判所で子どもの親権や財産分与をオンライン調停によって進めました。国際的要素が強い典型的なケースです。
2-2.手続きの流れ
当事者は日本の弁護士を代理人に立てて離婚調停を申し立てました。妻はリモート参加し、夫は代理人を通じて出席。3回目の調停で離婚・親権・財産分与で合意に至り、離婚成立。手続き全体がオンライン中心で完結する実例であり、今後の国際離婚事案にとって貴重な先例です。
2-3.日本で調停を進めるために必要だった書類・準備
進行にあたっては、日本の戸籍謄本、現地大使館発行の婚姻・在留証明の収集、通訳および調停委員とのコミュニケーション体制の構築、弁護士とのオンライン打ち合わせのスケジュール調整などが必要となりました。事前の書類収集と体制整備によって、スムーズな調停進行が実現しました。
3.海外在住での手続きの注意点とよくある誤解
3-1.「海外に住んでいるから日本では手続きできない」は誤解
「海外在住者は日本で離婚できない」と思われがちですが、戸籍が日本にあれば手続きは可能です。国際裁判管轄の要件を満たすことで、裁判所は申立てを受け付けます。本人不在の状況でも弁護士が代理人として申立て・出廷できるため、住んでいる国に関係なく利用しやすい制度です。
3-2.渉外案件の専門弁護士が必要な理由
国際離婚には書類翻訳・公証、時差対応、調停委員や通訳とのやりとりなど独自の難しさがあります。調停の通知や口頭のやり取り、予期せぬトラブルにも即応できる専門家が不可欠です。渉外案件に詳しい弁護士なら、円滑な進行と当事者の負担軽減を両立できます。
4.海外在住者のためのスムーズな進め方
4-1.日本に帰国せずに調停・裁判を行う方法
本人が日本に帰国できなくても、弁護士への委任とオンライン参加が可能な環境があれば調停・審判へ対応可能です。コロナ禍以降、家庭裁判所ではオンライン調停が広がっています。在住する国から直接参加でき、裁判所へ出向く必要もありません。海外在住者の離婚手続きを容易にする制度です。
4-2.事前に準備しておくべき3つのこと
①戸籍や婚姻届を確認し、手続きに必要な書類を揃える、②相手の所在地や連絡先を把握する、③翻訳・通訳体制を確保することが重要です。これらを整えることで手続きの滞りを防げます。逆に、書類漏れや言語対応の不備が、調停結果に不利に影響することもあるので注意が必要です。
5.まとめ:海外在住でも日本の裁判所で離婚は可能。早めの準備と専門家相談を
海外に在住していても、日本国籍や戸籍があれば、家庭裁判所で離婚調停や審判ができます。オンラインの仕組みと代理人制度を活用し、書類や翻訳準備をしっかり行えば、円滑に進行可能です。子どもや財産、在留資格など複雑な問題が絡む国際離婚では、渉外に強い弁護士への早期相談が成功の鍵となります。