人身保護請求とは
人身保護請求は、不当に奪われている人身の自由を、司法裁判により、迅速かつ容易に回復させることを目的とする非常応急的な特別の裁判手続です。
人身保護法は、元々、人々を公権力による不当な抑留・拘禁や私的団体による監置から免れさせて人身の自由を回復するための特別の救済方法として憲法の施行に伴い制定されたものでした。もっとも、現代社会では、そのような当初の目的に沿う形で利用されることはなく、実際には、夫婦間の子供の引渡しをめぐる争いにおいて利用されることがほとんどです。
人身保護請求の当事者
- 請求者
- 人身保護請求の申立人のことを請求者といいます。
- 被拘束者
- 法律上正当な手続によらないで身体の事由を拘束されている者をいいます。
- 拘束者
- 被拘束者に対して現実に拘束を行っている者をいいます。
裁判管轄
被拘束者、拘束者、請求者の所在地を管轄する高等裁判所・地方裁判所に申立てをすることができます(人身保護法4条)。
被拘束者・拘束者の出廷の便宜から被拘束者・拘束者の所在地を管轄する裁判所に適するのが相当です。
また、地裁・高裁のいずれにも提訴できます。もっとも、高等裁判所の方が期日が入りやすいため、高等裁判所に申立てがなされることが多くあります。
どのような場合に人身保護請求が認められるか
- 1身体の自由を拘束されていること
- 2拘束が違法であることが顕著であること
- 3他に救済の目的を達するのに適当な方法がないこと
この3つの要件を満たす場合に、人身保護請求が認められます。その内容について順番に説明します。
1身体の自由を拘束されていること
「拘束」とは逮捕、抑留、拘禁など身体の自由を奪い、または、制限する行為のことをいいます。
子供が意思能力を有しない年齢の場合には、子供を監護していること自体が拘束に該当すると考えられています。
他方で、子供が意思能力を有する場合には、そこに留まっていることは子供自体の意思によるものと考えられますので、原則として「拘束」にはあたりません。そこで、「拘束」にあたるというためには、子が自由意志に基づいて監護者のもとにとどまっているとはいえない特段の事情の存在が必要とされます。
意思能力とは「自己の境遇を認識し、かつ将来を予測して適切な判断をする能力」をいいます。10歳程度を境に意思能力の有無が分かれることとなり、12歳程度では特段の事情がない限り、意思能力があるものと考えられます。
2拘束が違法であることが顕著であること
拘束の顕著な違法性については、裁判例上、離婚前の父母の共同親権に服する子の引渡しを請求する場合と、離婚後の父母の一方の単独親権に服する子の引渡しを請求する場合とで異なる基準が定立されています。
離婚前の父母の共同親権に服する子の引渡しを目的とする人身保護請求における顕著な違法性としては、拘束者が子を監護することが子の降伏に反することが明白であることを要するとされています。
そして、その具体例としては、①拘束者に対し、子の引渡しを命ずる審判前の保全処分または審判が出され、親権行使が事実上制限されているのに拘束者がこれに従わない場合、②拘束者の監護の下では、子の健康が著しく損なわれたり、満足な義務教育を受けることができないなど、拘束者の子に対する処遇が親権の濫用と評価される場合などが挙げられます。
他方で、離婚後の単独親権者から非監護権者に対する子の引渡しを目的とする人身保護請求においては、請求者による監護が著しく不当でない限り、拘束者による拘束には、顕著な違法性が認められます。
3他に救済の目的を達するのに適当な方法がないこと
他に救済の目的を達するのに適当な方法があるときは、その方法によって相当の期間内に救済の目的が達せられないことが明白でなければ、人身保護請求はできないとされており、これが補充性の要件と言われております。
したがって、離婚前の父母の共同親権に服する子の引渡しを目的とする人身保護請求においては、子の引渡しの強制執行をして、これが不奏功に終わった場合でなければ、補充性の要件は満たさないと考えられます。
他方で、離婚後の単独親権者から非監護権者に対する子の引渡しを目的とする人身保護請求においては、そのような手続きを前置する必要はありません。
審理手続
審問期日は、原則として、被拘束者及びその代理人、拘束者及び請求者又はこれらの代理人が出頭しなければ、開くことができません。
出頭した被拘束者は、審問期日の開始に先立ち、裁判所職員が預かって、審問期日が行われる法定とは別の部屋において保護されるのが通常です。
その後、審問期日が開廷し、書面の陳述や疎明資料の取調べが行われます。それらが終了した後、一旦休廷を挟み、その日のうちに判決が言い渡されます。
請求が認容された場合には、裁判所が預かった被拘束者は、請求者に引き渡されます。
ハーグ条約との関係
最高裁判所は、ハーグ条約実施法における子の返還請求が認容され、子を常居所地国に返還することを命ずる旨の終局決定がなされたにもかかわらず、これに従わず、一方の親が子の監護を継続していたという事案において、「拘束者による被拘束者の監護を解くことが著しく不当であると認められるような特段の事情のない限り,拘束者による当該子に対する拘束に顕著な違法性がある」という判断基準を示しました。
したがって、ハーグ条約実施法に基づく子の返還請求事件において、返還を認める決定・調停がなされたにもかかわらずそれが実現されないような場合には、最終手段として、この人身保護請求を利用することになります。
料金体系
事務所は、これまで複数回にわたり人身保護請求に係る手続きを代理して参りました。その経験は日本国内の法律事務所の中でも有数であると自負しております。子供が連れ去られ人身保護請求を検討しているお客様や逆に子供の返還を求められているお客様はどうぞ当事務所にご相談ください。
なお、人身保護請求に係る料金体系は以下の通りです。
- 着手金
- 88万円~
- 報酬金
- 88万円~