外国人労務管理のポイント
1.在留資格と契約期間
外国人労働者が日本で働くためには在留資格を取得する必要があります。
在留資格には、許可された活動内容や在留期間といった情報が紐づいており、それらを理解した上で管理する必要があります。
在留資格は一部の例外を除き在留期間が定められているため、在留期限が迫ってきたタイミングで期間更新許可申請の手続きも行う必要が生じます。
加えて、在留期間は雇用契約期間とも密接に関わります。
正社員として採用する場合、在留期間と雇用契約期間はイコールにはなりませんが、契約社員などの形態で採用する場合は、在留期間と雇用契約期間の整合を図るケースも生じることが考えられます。
外国人を採用する場合には、当該外国人が、会社が従事させようとする業務につくことができる在留資格を有しているのか否かを十分に確認する必要があります。雇用形態や状況に応じて、適切な対応が必要です。
2.賃金などの労働条件
外国人労働者の労務管理を行う際は、日本人と同様に労働基準法が適用されます。
これによって最低賃金、労働時間の制限も法律に基づいて規定されています。
8時間を超えた勤務をしてもらう場合は割増賃金の支払いが必要ですし、年休も支給しなければなりません。
賃金については在留資格取得における条件となっていることが多く、具体的には同様の業務に従事する日本人従業員と同等以上の賃金を保証することが求められます。
不思議なことに、外国人労働者は低賃金で雇用できるというイメージを持つ方も多いですが、外国籍であることのみを理由に日本人よりも低い賃金を設定することはできません。
また当然ながら、賞与や昇給、福利厚生など賃金以外の労働条件についても、差別的な扱いをすることは禁止されています。
3.雇用契約書と労働条件の明示
外国人労働者を雇用する際は、雇用契約書の締結や労働条件の明示をすることになります。
この場合、該当する外国人労働者が雇用契約や労働条件の内容を本当に理解できているかどうか、が重要なポイントになります。
もししっかりと理解できていない場合、後々トラブルにも繋がりかねず、最悪の場合退職や法廷論争を招く可能性があります。
これらの事態を予め防ぐためにも、雇用契約書と労働条件を確実に明示する必要があります。
外国人労働者でも理解できる簡単な日本語で表記する、または彼らの母国語や英語で記載した書類を用意することが必要です。
また、単に雇用契約書や労働条件について記載した書面を渡すのではなく、口頭でも詳しく伝えた上で、不明な点がある場合はすぐに質問してもらえるような機会を設けるのも大切な取り組みと言えます。
4.雇用契約書と労働条件の明示
外国人労働者が日本で働くには、従事予定の業務内容に適応した在留資格を取得することが求められます。
それぞれの在留資格には活動範囲が定められており、許可された活動範囲を超えた業務に従事すると不法就労に問われます。
そして不法就労に該当した場合、外国人労働者だけでなく、雇用している企業側も不法就労助長罪に問われる可能性が生じます。
このような事態を招かないためにも、適切な業務指示を行うことが重要です。
5.就業規則と労務慣行
就業規則は外国人を含めて常時10人以上の労働者を雇用している企業には作成・届が義務付けられています。
就業規則は業務に従事する上で守るべきルールを定めたものですが、日本語で書かれていることが多く、外国人労働者にとってはわかりづらい資料になりがちなため、彼らにも分かりやすい言語や表現で記載されたものを用意する等の対応が必要です。
また、労務慣行のように就業規則に記載されていないものの暗黙のルールと化している情報についても、明文化した上で外国人労働者に共有しておくことで些細なトラブルを未然化する効果があります。
6.労災保険と社会保険
外国人労働者であっても、一定の条件を満たすことで労災保険や社会保険に加入させる必要があります。
- 常時雇用されている従業員(正社員)
- 週または月の所定労働時間が、常時雇用されている従業員の4分の3以上
また、
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定月額賃金が8.8万円以上
- 学生以外
- 1年以上の継続勤務が見込まれる
- 従業員が501人以上の事業所
といった条件に当てはまる場合は社会保険への加入が義務付けられています。
労災保険は社会保険のように労働時間などの条件が設けられておらず、基本的に日本の企業で働く全ての労働者が加入する必要があります。
外国人労働者も当然に例外ではなく、仮に労災が発生した場合は所定の手続きを踏む必要があります。
7.健康診断
外国人労働者も日本人同様に、入社時に健康診断を受ける必要があり、また年に1回の健康診断も受診が必要です。
健康診断を受けさせなかった場合は労働安全衛生法に違反することになり、労働基準監督署から是正勧告を受けることになります。
在留資格によっては来日前に健康診断を受ける必要があるものあり、注意が必要です。
8.留学生アルバイトの雇用
留学生をアルバイトとして雇用する場合、資格外活動許可を有しているかを確認する必要があります。
本来在留資格「留学」は就労が認められていませんが、資格外活動許可を得ることで週28時間までの就労が認められるようになります。
就労時間も、アルバイト一つあたりの制限ではなく、すべてのアルバイトを含めて週28時間以内に抑える必要がある点も注意が必要です。
この制限を把握せず週28時間を超えた就労に従事させた場合は、不法就労助長罪に該当します。