
ハーグ条約とは?
国際的な子どもの連れ去りに関する問題に対応するための国際条約
ハーグ条約(正式名称。国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)は、国境を越えて一方の親により不法に連れ去られた、または留置された子どもに関する紛争を迅速に解決するために定められた国際条約です。
たとえば、一方の親の同意を得て一時的に帰国した子どもが、約束の期限を過ぎても元の国に戻されないといったケースがハーグ条約の適用されるケースに該当します。
主な目的。子どもの「常居所地国」への迅速な返還
ハーグ条約の最大の目的は、子どもを元々生活していた国(常居所地国)に迅速に返還することです。このため、条約では返還請求や裁判手続きに関する明確なルールが定められています。
ハーグ条約の加盟国数
2024年8月時点で、ハーグ条約に加盟している国は100か国を超えています。
日本とハーグ条約。国内実施法の整備
日本は2014年にハーグ条約を批准し、これを国内で実施するために「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律」(通称。ハーグ条約実施法)を制定しました。この法律により、子どもの返還手続きや面会交流に関する対応が国内法のもとで行えるようになっています。
ハーグ条約の仕組みとは?
子どもを「もともと住んでいた国(常居所地国)」へ返還するのが原則
ハーグ条約(正式名称。国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約)は、国境を越えた子どもの連れ去りや留置に関する紛争を迅速に解決するための国際条約です。この条約では、「子どもは原則として元の生活拠点(常居所地国)に返還されるべき」という考え方が採用されています。
ハーグ条約による返還命令の要件(原則)
日本国内の裁判所は、以下の4つの要件すべてに該当する場合、子どもの常居所地国への返還を命じなければなりません。
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①子どもが16歳未満であること
※返還申立て時点で16歳未満でも、審理中に16歳に達した場合にはハーグ条約は適用されません。
-
②子どもが日本国内にいること
※子どもが日本からさらに第三国に移されている場合には適用されない可能性があります。
-
③連れ去り・留置が申立人の「監護権」を侵害していること
たとえば、母親が子どもを連れて一時帰国(里帰り)し、合意に反してそのまま日本に留まっている場合などが該当します。
※「監護権」はハーグ条約上の法的概念であり、常居所地国の法律に基づいて侵害の有無が判断されます。
- ④連れ去り・留置開始時に、常居所地国がハーグ条約の締約国であること
返還命令の内容と監護権の判断について
重要なのは、返還命令は「常居所地国への返還」であり、「親への返還」ではないという点です。したがって、連れ去った親が子どもと共に常居所地国に戻ることも認められています。
また、返還手続きでは、子どもの親権や監護権の帰属については判断されません。これらは、子どもが返還された後、常居所地国の裁判所が判断します。
ハーグ条約における返還拒否の例外(拒否事由)
次のいずれかに該当する場合、裁判所は例外的に返還を拒否することができます。
- 連れ去りから1年以上が経過し、子どもが新しい環境に適応している場合
- 申立人が連れ去り時に監護権を実際に行使していなかった場合
- 申立人が事前に同意していた、または事後に承諾していた場合
- 返還によって子どもの心身に重大な害悪を及ぼしたり、耐えがたい状況におくおそれがある場合
- 子どもが返還を拒否し、その意見を考慮するのが適当な年齢や発達段階にある場合
- 日本国の人権・基本的自由の保護に関する基本原則に反する場合
面会交流(ハーグ条約実施法による対応)
日本では「ハーグ条約実施法」により、子どもとの面会交流の機会を確保する制度が設けられています。子どもを連れ去られた親は、日本の中央当局に対して援助を求めることが可能です。
面会交流は、子どもの福祉を守る上で重要な手段であり、返還の有無にかかわらず取り組むべき課題とされています。
中央当局による支援とは
外務省ハーグ条約室が担うサポート内容と役割
1.中央当局とは?【外務省が担当】
ハーグ条約では、すべての締約国に対し、「中央当局(Central Authority)」の設置が義務づけられています。
日本では、外務大臣が中央当局に指定されており、その実務は「外務省 領事局ハーグ条約室」が担当しています。
中央当局の主な役割は、以下の2つに分類されます。
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①他国の中央当局との連携・協力
子どもの迅速な返還を確保するなど、ハーグ条約の目的を達成するための国際的連携・協力
-
②国内関係機関との調整
裁判所・法務省・警察・地方自治体など、国内の権限ある当局との連携促進
2.中央当局による具体的な支援内容
外務省ハーグ条約室は、以下のような返還・面会交流に関する実務的支援を行っています。
- 子どもの返還申請や面会交流の申請の受付と手続き支援
- 関係者からの相談受付
- 子どもの所在の特定(調査協力)
- 当事者間の話し合いによる解決の促進(ADR的支援)
- 翻訳支援(申請書・裁判所提出書類の翻訳など)
- ハーグ条約に詳しい弁護士の紹介
- 海外の中央当局との連携・照会対応
このように、国際的な子どもの返還や面会交流に関する課題に対して、中央当局が幅広く支援してくれます。
3.どこの裁判所で手続きできるのか?
ハーグ条約に基づく返還・面会交流に関する事件は、日本全国で以下の2つの裁判所に限定されています。
- 東京家庭裁判所
- 大阪家庭裁判所
※その他の家庭裁判所に申立てを行っても、受理されませんので注意が必要です。
4.審理の方法はどのようなものか?
裁判の期日は非公開で行われます。当事者双方が証拠等を提出し、場合によっては当事者や関係者の尋問を行うこともあります。
子の返還申立 審理の流れ
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- ステップ1
裁判所に子の返還申立をします。
(同時に出国禁止命令、旅券提出命令申立もできます。)
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- ステップ2
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申立から2週間程度後をめどに、第1回期日が指定されます
(裁判所が、当事者双方の主張を聴取します。また、裁判所や中央当局による調査が行われる場合もあります。)※なお、当事者双方の同意があれば、調停や和解による解決を試みることもあります。
調停や和解が不成立となった場合、次のステップ3に進みます。
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- ステップ3
裁判所による返還の許否の判断がなされます。
子どもの国外への連れ出しを防ぐための制度
ハーグ条約実施法に基づく出国禁止と旅券提出命令
国際的な子どもの連れ去りに関する返還申立てがなされ、その審理が進んでいる段階であっても、相手方が子どもを日本国外へ連れ出してしまった場合には、返還手続きが無意味になってしまいます。
このような事態を防ぐため、日本の「ハーグ条約実施法」では、子どもの出国を防止するための制度が設けられています。
出国を防止するための2つの制度
- 出国禁止命令(子の国外への出国を禁止する命令)
家庭裁判所は、返還手続中に相手方が子どもを日本国外に連れ出すおそれがあると認められる場合、その出国を一時的に禁止する命令(出国禁止命令)を出すことができます。
この命令により、空港や港湾などの出国審査時点で子どもの出国が制限されます。 - 旅券提出命令(子のパスポートの提出命令)
家庭裁判所は、相手方に対し、子ども名義のパスポートを外務大臣に提出させるよう命じることができます。
この「旅券提出命令」によって、実質的に出国の手段を制限することができ、子どもの国外出国を未然に防ぐ強力な手段となります。
出国を防止するための制度の重要性
これらの制度は、ハーグ条約に基づく子どもの返還手続を実効的に機能させるために不可欠なものです。
特に、審理の途中で子どもが第三国に移されてしまった場合、日本の裁判所の管轄が及ばなくなる可能性があり、返還が極めて困難になります。そのため、出国を防止するための制度を初動段階でとることが極めて重要です。
子どもの返還を実現する方法とは?
返還命令が出た後の手続きと強制手段
ハーグ条約に基づく返還手続において、家庭裁判所が子どもの返還命令を出したにもかかわらず、相手方(子どもを連れ去った親)が任意に子どもを返還しない場合、以下のような法的手段によって返還の実現が試みられます。
1.間接強制による返還の促進
申立人は、まず家庭裁判所に対して「間接強制」の申立てを行うことができます。
これは、相手方に対して一定額の制裁金(間接的な圧力)を課すことで、子どもの返還を促す制度です。
- 制裁金は支払い義務が発生するだけでなく、実際に子の返還がなされない限り回避できません。
- 間接強制決定が確定した後、相手方の財産に対して強制執行を行うことも可能です。
2.代替執行による返還の実行
間接強制によっても返還がなされず、決定確定後2週間が経過しても返還されない場合には、申立人は「代替執行」を申し立てることができます。
代替執行が認められた場合
- 申立人(または返還実施者)が執行官と共に相手方のもとを訪れ、子どもを解放する手続きを実施します。
- その後、子どもは申立人(または返還実施者)とともに常居所地国に帰国します。
3.有形力の行使と人身保護請求
ただし、日本のハーグ条約実施法では、執行官や返還実施者が
「有形力(=物理的な力)を行使して子どもを無理やり連れ戻すこと」は原則として禁止されています。
つまり、相手方が子どもの返還を強く拒否した場合、代替執行によっても実際の返還が困難となるケースがあります。
このような場合に、最終的な手段として考えられるのが、「人身保護請求」です。
- 人身保護請求が裁判所で認められると、有形力を伴う子どもの奪還が法的に認められます。
- この請求は、子どもの自由と安全を確保するための憲法上の救済手段であり、最終的な強制力を持ちます。
手続き段階 | 内容 | 強制力 |
---|---|---|
間接強制 | 制裁金により心理的・経済的圧力を加える | 間接的 |
強制執行 | 相手方の財産に対する差押え等 | 財産的強制 |
代替執行 | 執行官とともに子どもを保護・返還 | 非有形力による実施 |
人身保護請求 | 有形力を行使して子どもを奪還 | 最終的手段・強制力あり |
子の返還までの流れ)
- 子の返還命令の申立て
- 間接強制の申立て
- 子の返還の代替執行の申立て
- 人身保護請求の申立て
【2020年施行】ハーグ条約実施法の改正ポイントとは?
子どもの返還手続きの実効性を高めるための法改正
2019年5月に「ハーグ条約実施法(正式名称:国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律)」が改正され、2020年4月1日より施行されました。
この改正は、子どもの返還命令の強制執行をより実効的に行えるようにすることを目的としています。
主な改正内容(3つの要点)
1.間接強制を経ずに代替執行が可能に
- 改正前:
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- 家庭裁判所の間接強制決定が確定してから2週間が経過しないと、代替執行が認められませんでした。
- 改正後:
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- 一定の条件を満たす場合に限り、間接強制を経ることなく、すぐに代替執行が可能となりました。
これにより、返還拒否が明らかなケースにおいて、迅速な執行対応が可能となりました。
- 一定の条件を満たす場合に限り、間接強制を経ることなく、すぐに代替執行が可能となりました。
2.子どもが相手方と同居していない場合でも解放実施が可能に
- 改正前:
-
- 子どもが「相手方と一緒にいる場合」にのみ、代替執行による解放実施(子どもの引き渡し)が認められていました。
- 改正後:
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- 子どもが単独でいる場合でも、返還の解放実施を行うことが可能になりました。
これにより、相手方が物理的に子どもと距離をとって執行を妨害する手段が通用しなくなりました。
- 子どもが単独でいる場合でも、返還の解放実施を行うことが可能になりました。
3.第三者の占有場所でも裁判所の許可で執行可能に
- 改正前:
-
- 子どもが第三者の占有する場所(例:祖父母の家など)にいる場合は、その占有者の同意がなければ、代替執行ができませんでした。
- 改正後:
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- その場所が子どもの住居であると認められる場合に限り、裁判所の許可があれば占有者の同意がなくても代替執行が可能となりました。
この改正により、執行妨害のリスクが減少し、実効性が高まりました。
改正の背景と意義
この法改正は、子どもの返還命令が形骸化しないようにするための重要な制度的整備であり、今後の実務に大きな影響を与えるものと考えられます。
特に、悪意ある返還妨害(たとえば、子どもを他人に預けて隠すなど)への対抗手段が強化されたことで、返還の実効性が高まったと言えます。
ミラー・オーダー(Mirror Order)とは?
「ミラー・オーダー(Mirror Order)」とは、ある国(たとえばA国)の裁判所が出した命令の後、当事者が別の国(B国)に移動した場合に、A国の命令と同一内容の命令をB国の裁判所において改めて出してもらう制度のことを指します。
これは、元の国の裁判所命令(例:親権、面会交流、子どもの返還など)を「鏡写し(mirror)」のように反映した命令であることから、このように呼ばれています。
なぜミラー・オーダーが必要なのか?
たとえば、面会交流に関する命令がA国で出されたとしても、その命令の法的効力は原則としてA国内に限定されます。そのため、当事者がB国に移住した後、同一内容の命令がB国でも発効していないと、実際に子どもとの面会交流の実施を確保することができないという問題が発生します。
このような事態を回避するために、B国の裁判所で「ミラー・オーダー」の発令を求める申立てが行われるのです。
日本におけるミラー・オーダーの位置づけと対応方法
日本には、外国判決をそのまま「ミラー・オーダー」として承認・執行する制度は存在しません。
しかし、実務上は以下のような方法が考えられます。
外国命令の反映方法(実務対応)
- 調停申立て(家庭裁判所)を行い、外国裁判所の命令内容と同様の合意内容を日本国内で調停として成立させる
- または、必要に応じて審判申立てを行い、日本の法律の枠内で外国裁判所の命令内容と同等の法的効果のある裁判所決定を取得する
これにより、日本国内でも外国裁判所の命令に基づいた権利・義務関係が保全されることになります。
ハーグ条約との関係:ミラー・オーダーの必要性が増加
ハーグ条約実施法の施行(2014年)およびその後の運用拡大により、日本が子どもの返還・面会交流等に関与する国際案件は年々増加しています。
その中で、外国(元の居住国)での返還命令や面会に関する命令を、日本でも確実に執行可能にしたいという要望(ミラー・オーダー的ニーズ)は今後さらに高まると見られます。
【事例紹介】ハーグ条約に基づく子どもの返還・不返還の解決例
Case1:ハーグ条約に基づき子どもの返還が認められた事例
- 事案の概要
依頼者はA国籍の女性で、同国出身の男性と結婚後、B国で家族として生活していました。しかし、夫婦仲が悪化し、B国で離婚訴訟が進行中の中、夫が女性の同意を得ずに子どもを日本へ連れ帰ったことから、女性は当事務所に相談に訪れました。女性は、ハーグ条約に基づく子の返還請求を希望されました。
- 解決方法
当事務所の弁護士は速やかに家庭裁判所へ子の返還申立てを行いました。相手方男性は「B国において母親が子どもにDVをしていた」と主張し返還を拒みましたが、裁判所は女性の主張を認め、子どもをB国に返還する決定を下しました。
➡ハーグ条約に基づく子どもの返還請求が認められた典型的な事例です。
Case2:子どもの不返還と離婚が成立した事例
- 事案の概要
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依頼者は日本国籍の女性Xで、A国籍の男性Yと結婚し、A国で生活していました。2人の間に生まれた子ZもA国で育っていましたが、夫Yの家庭内暴力(DV)により、Xは子Zを連れてYの同意なく日本へ帰国しました。
XはYからA国に戻るように連絡を受けたものの、今後は日本で生活すると伝えた上で帰国せず、1年以上が経過。その後、Yがハーグ条約に基づく返還申立てを行い、Xは東京家庭裁判所から申立書を受け取りました。
- 解決方法
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当事務所は、初回期日に対応可能な複数の弁護士で迅速に受任しました。
そして、弁護士らの調査・準備により、以下の点が明らかになりました。- 返還申立てまでに1年以上が経過しており、子Zは日本の小学校に通学中であるため、ハーグ条約における返還拒否事由(定着適応)に該当する。
- YがZの面前でXに対し暴力を振るっていたことを示す証拠(診断書・証言)があり、返還すれば子どもの心身に深刻な悪影響を及ぼすおそれがある。
弁護士はこれらを踏まえ、答弁書と証拠資料一式を裁判所に提出しました。
- 結果
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第1回期日後、裁判官の勧めにより、和解による解決に向けた調停が開始。
その結果、次のような合意が成立しました。- 子ZのA国への返還は行わない(不返還)
- XとYは離婚に合意
- Yと子Zの面会交流のルールを定めて調停成立
➡子どもの福祉と安全を重視し、返還拒否と離婚が共に成立した好例です。
Case3:子の不返還と面会交流に関する合意が成立した事例
- 事案の概要
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相談者はA国籍の女性で、B国籍の夫とともにヨーロッパのB国で生活していました。夫婦間に不和が生じた後、相談者はかつて日本で仕事をしていた経緯があったことから、子どもを連れて日本に帰国し、日本での生活を開始しました。
一方で、夫は引き続きB国に滞在していました。すでに夫婦仲は冷え切っていたため、相談者は、現地で離婚手続を進めていました。そのような中、夫がハーグ条約に基づき、日本の家庭裁判所に対して子の返還申立てを行いました。
夫は「日本への渡航は一時的に認めただけであり、期限を過ぎても帰国しないことは子の不法な留置にあたる」と主張しました。
- 解決方法
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当事務所の弁護士は、相談者の代理人として家庭裁判所に出廷し、次のような主張を行いました。
- 子の常居所地はすでに日本に移っていること
- 日本への帰国には夫の明確な同意があったこと
- 帰国にあたって期限の定めはなく、「留置」にはあたらないこと
裁判所における審理を経て、これらの主張がおおむね認められ、最終的には裁判所の主導のもと、子を返還しないこと(不返還)を前提とし、父子の面会交流を認める内容での和解が成立しました。
- 結果
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- 子どものB国への返還は行わない(不返還)
- B国に居住する父親との面会交流の具体的な方法について合意
- ハーグ条約に基づく子の返還申立ては和解により終結
- 解決のポイント
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- この事案では、ハーグ条約の「不法な留置」にあたるかどうかが争点となりましたが、弁護士による精緻な事実整理と法律構成によって、返還義務はないと判断されました。また、子の福祉を重視し、面会交流という柔軟な解決策を組み込んだ和解に至った点が重要です。
ハーグ条約に関するよくある質問(FAQ)
- Q1.ハーグ条約はどんなときに適用されるのですか?
-
A.
ハーグ条約は、16歳未満の子どもが一方の親の同意なく国外に連れ去られた場合や、合意のもと国外に出たが期限後も帰国しない場合(留置)に適用されます。
この条約は、加盟国間(例:日本・アメリカ・フランスなど)での国際的な子の不法な連れ去りや留置に対応するための制度です。※親権や監護権の帰属そのものを決めるものではなく、「子どもを元の国(常居所地)に返還すること」が目的です。
- Q2.ハーグ条約に加盟していない国の場合は?
-
A.
加盟国以外(例:中国やサウジアラビアなど)に連れ去られた場合は、ハーグ条約の手続は使えません。
その場合は、相手国の国内法や外交ルート、または個別の交渉や現地手続きによって解決を図る必要があります。
当事務所では、非加盟国との国際的な子の連れ去り案件にも対応実績がございます。
- Q3.子どもの返還請求は誰ができますか?
-
A.
通常は、子どもの常居所地(生活の拠点)にいた親権者や監護権者が返還請求を行います。
- Q4.子どもの返還が認められない(拒否される)ケースは?
-
A.
以下のいずれかに該当する場合、裁判所は子どもの返還を拒否することができます(ハーグ条約第13条等に基づく「返還拒否事由」)。
- 連れ去り(または留置)から1年を超えて申立てがなされ、子が新しい環境に適応している場合
- 申立人が連れ去り当時に監護権を行使していなかった場合
- 連れ去り・留置に同意、または事後に承諾していた場合
- 返還によって子の心身に重大な害が及ぶおそれがある場合(例:DV、虐待)
- 子どもが返還を拒否し、その年齢や発達段階からしてその意見を考慮すべきと認められる場合
- 返還が日本の人権・自由の基本原則に反する場合
- Q5.子の返還請求に期限はありますか?
-
A.
原則として、不法な連れ去り・留置があった日から1年以内に申立てることが必要です。
1年以上経過すると、子どもが新しい生活環境に適応しているとみなされ、返還が拒否される可能性が高くなります。
- Q6.返還請求にかかる期間は?
-
A.
家庭裁判所に申立てた場合、原則として6週間以内に判断が下されます。
ただし、相手方が任意に返還しない場合は、間接強制や強制執行などの追加手続きが必要となり、時間を要することがあります。
- Q7.返還請求をすれば自動的に親権を取得できますか?
-
A.
いいえ。ハーグ条約は親権の帰属を判断する制度ではなく、子どもを常居所地国に返すことが目的です。
返還後の親権や監護権は、返還先の国の家庭裁判所などで別途決定されます。
- Q8.弁護士に依頼するメリットは何ですか?
-
A.
国際的な子の連れ去り事案では、外国法の理解・翻訳・証拠資料の収集・海外弁護士との連携など複雑な対応が求められます。
専門弁護士に依頼することで、迅速かつ的確に返還請求や防御対応が可能となり、安心して手続きを進められます。
- Q9.弁護士費用はどのくらいですか?
-
A.
事案の内容によって異なりますが、着手金+成功報酬制が一般的です。
当事務所では、初回相談時(ケースによっては相談後になることもあります)にお見積りをご提示しておりますので、お気軽にご相談ください。
- Q10.申立てに必要な書類は?
-
A.
一般的に必要な書類は以下のとおりです:
- 子の返還申立書
- 申立人、相手方及び子どもの身分事項を証する公的書類(戸籍謄本、出生証明書など)
- 子の連れ去り・留置の経緯を示す資料(航空券、メール・LINEの履歴、同意文書など)
ケースによってはそのほかの書類が必要になることもあります。詳細は弁護士が個別にご案内いたします。
このようなお悩みはありませんか?
- 離婚の話し合いの最中に一方の親が無断で子どもを連れて国外に帰国・滞在してしまった
- ハーグ条約に基づく返還申立てを受けたが、返還を拒否できるかどうかわからない
- 子どもの日本における安全・安定した生活環境を優先して法的に保護したい
- 日本で子どもとの面会交流を確保したい
当事務所では、以下のような支援を行っています。
- ハーグ条約に関する家庭裁判所手続の代理
- 面会交流や返還請求に関する交渉・調停支援
- 返還拒否事由に該当するか否かの法的判断と証拠収集支援
- 海外法務に詳しい弁護士との連携(英語、フランス語、スペイン語対応可)